第17話 ありがとう.ー6月5日,梅雨に入る前にー
今年は雨が多かった.
玉ねぎは全国的に不作らしい.
じいちゃんが植えた玉ねぎも殺菌剤を撒いたものの,元気がなかった.
しかし,梅雨前の6月5日(日),無事収穫の日を迎えた.
作業はみんなで行った.
玉ねぎは梅雨に入る前の晴れが3日ほど続いた日に収穫する,
とかいてあったが,私やみんなが集まれる土日でそのような日はなかなか読めず,
タイミングを逃してはいけないと,
とても緊張していた.
たまたま,直前まで私が東京にいたこともあり,天気は余計に読めなかった.
ネット社会であっても,東京にいると思った以上に,地方の天気はわからない.歯がゆい思いをした.
もっと逐一天気の情報をくれとSに何度も要求することもあった(ごめんなさい).
ようやく収穫の時.
みんなでやると一瞬で作業は終わった.
200本じいちゃんが植えて,私たちはそのほぼ全てを無事収穫できた.
立派に育った玉ねぎたち...
4月のまだ始めた頃のことが思い出された.
あの頃は,玉ねぎしかなかったし,ミニ耕運機の使い方も知らなかった.
Sと始めた畑作業.
畑に行くと,しんどいし草に当たってもしょうがないので,私はしょっちゅうSにイライラした口調で接してしまった.
ああ,これではまるで,しょっちゅう畑でおばあちゃんのことをクソババアと呼んでいたじいちゃんみたいだ.(そこまでは言ってないけど)
ごめんS.
感謝しているけれど余裕がない.今日までそんな毎日だった.
そして,今日,玉ねぎがなくなった畑を見てやっと肩の荷が下りた.
じいちゃん,よかったな.
ちゃんと収穫できたで.
今回,気づいたことがある.
じいちゃんはいつも田んぼに関しては無茶苦茶だった.
私たち親族はじいちゃんに振り回されているという意識が大きかった.
しかし,梅雨に入る前の3日連続の晴れなんて.そしてみんな集まれる日なんて,全然なかった.
じいちゃんもまた,天候に振り回され,今日やるしかないという思いだったのだろう.
気づいたのは今になってだけど,じいちゃんが玉ねぎを残してくれ,二百本がちゃんと大きく育ち収穫でき,このような学びを与えてくれた.
ええもん遺していったなあと思う.
なかなかやるなあ.
今日食べた玉ねぎは,切るととても目にしみて,
焼いて食べるとジワーッと甘かった.
そして,家に帰るとじいちゃんの写真の前に母が玉ねぎを供えていた.